対岸の火事

投稿日:2019年12月02日(月)

表顕力




2004年2月。

狂牛病の発覚により、大手牛丼チェーンで牛丼の販売が休止になりました。でも、それは日本だけの話で、アメリカでは、何も変わらず牛丼を食すことができました。

 

日本時間で中止となった当日、職場の日本人の仲間と一緒にマンハッタンの牛丼チェーン店で昼食を取っておりました。

お店に入ると、メディア関係者と思われる人たちが複数名、落ち着かない感じで周りを見渡しながら、日本人客とわかると、手あたり次第声をかけていました。

 

僕らは、普通に注文をし、普通に席に座り、普通に会話しながら、普通に食事をしていましたが、しばらくすると、メディアの方が、普通じゃない感じでこちらに近づいてきて、普通じゃない感じで話しかけてきました。

「すみません。テレビ局のものですが、取材をお願いしてよろしいですか?」

明らかに、話しかけた対象が僕でしたので、僕は、普通に答えました。

「構いませんが、必ず放送されますか?放送されるのであれば、取材をお受けします。」

いや、普通じゃない答えだったかもしれません。

記者の方は、「いやぁ~~。放送される確率は、80%くらいです。。。」困った感じで答えました。

 

僕自身、メディアに出ることに対しては、あまり抵抗がなかったようで、お店に入ってメディア関係者と認識した時点で、要請があれば、受けるつもりでおりました。

「わかりました。では、よろしくお願い致します。」と答えると、

「今日からBSEの関係で、日本では牛丼の販売が休止されました。そのことについて、どのように思われますか?」と早速の質問をいただきました。

 

「対岸の火事です。」

 

と間髪入れずに答えたのを覚えております。

そのままの意味で答えたつもりでしたが、「と言いますと?」と返されてしまいました。

対岸の火事の一言で伝わらなかったことが残念で、何か説明をした筈ですが、どのような説明をしたかは全く覚えておりません。

 

時々、テレビで新橋の酔っぱらいにインタビューする様子が流れますが、放送される人の共通点を「インパクトがある人」と解釈しております。

政治家的な「One Word」である必要はありませんが、短い単語でインパクトを与える際、四字熟語やことわざ、格言は活用できることを実感しました。

 

その後、日本の家族から連絡がありました。

「あんた取材受けたの?対岸の火事って言った?BSのニュース番組で流れていたよ。」

80%の確率で、放送される保証はありませんでしたが、その連絡を聞いて安堵の気持ちで満たされました。

 

日本に戻ることを意識すらしていなかった頃の出来事です。

 



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